第2回 野市「農学カフェ」
循環する暮らしの共有(座談会トーク)
8/24(土)、9月から正式にスタートする小さなマルシェ「野市」のプレ企画として、「野市」に参加予定の農家さんや循環する暮らしを実践している方との座談会「農学カフェ」の第2回目として開催されました。場所は「野市」の開催場所となる「みんなの産直マルシェ Yotteco」です。
今回のテーマは
【農家の暮らしの食べものの自給と自家製造・貯蔵】
座談会スピーカーは前回のメンバーに加えて、豊橋市在住の現代陶作家の兼藤 忍さんと兼藤さんのお母さん、「リカとハナコの畑おやつ」として田原市で農的暮らしのあり方を探究する安藤理香さんです。
【新たに参加してくれたメンバーのご紹介】
◾️安藤理香さん/リカとハナコの畑おやつ
愛知県東海市出身の安藤さんは、田原市にある、“地球一個分の暮らしを目指す”「渥美どろんこ村」で2年半ほど研修を受けた後、現在も「渥美どろんこ村」の事業をサポートや様々な農園のお手伝いをしながら自分が目指す暮らしとコミュニティーの実現に向けて勉強と実践を重ねています。
『動物を中心にした暮らしが自分には合っている』話す安藤さんは「渥美どろんこ村」で山羊のお乳を毎日絞ったり、豚との生活を通してそんな実感に至ったとのことです。
◾️兼藤 忍 さん(現代陶作家)
兼藤さんは現代陶作家として作品を制作し、東海地方を中心に展覧会を開くなどの活動の傍ら、自宅の畑や庭で作物を育てたり、ニホンミツバチの飼育もしています。
焼き物作家として兼藤さんが創作する作品は地元の土を使ったものや、命の根源を連想させるような有機的な造形で観る人を魅了しています。
実生活でも、「土」に生きる焼き物作家としても「農」が中心にあるような兼藤さんです。
同席してくれた兼藤さんのお母さんは90歳。
現在も自ら営む雑貨店の店主として現役で仕事をしています。兼藤さんのお母さんが昔、体験していきたという話の中で、田んぼや畑はもちろん、山羊を飼ったり、養蚕や機織り、牛が浜辺で引っ張る地引網の話など、昔は一般的におこなわれていた「つくる暮らし」の様子も教えてくれました。
早速、皆さんの暮らしの中の手作りについて、お話を伺いました。
自家製のお酢。その作り方とは?
豆に暮らす野の暮らし研究所の豆野さんはこれまで自身の好奇心やチャレンジ精神で、食とエネルギーの自給的生活を目指して様々なものづくりをしてきました。
その中で、保存食や調味料づくりとしては継続して味噌や梅干しなどの漬物各種を作り、またこれまでに醤油やお酢づくりもしてきたそうです。
この話題になり、ふと「そういえばお酢ってどのように作られるのだろうか?」という素朴な疑問が湧いてきます。
【お酢とは】
穀物や果実などのデンプンからまず酒(アルコール)をつくり、酢酸発酵させたものがお酢。アルコールに「酢酸菌」が作用することで作られる。【酢酸菌とは】
アルコールを酢酸に変える細菌。酢酸菌は空気中に浮遊しているほか、梅・ぶどうなどの果実や柿・りんごの皮、花やはちみつなどに存在している。
“買うこと”がいつの間にか当たり前になっている
手作りの良さを見直す
「作れるものは作ってみよう」という考えで農産物、調味料、保存食、また住環境や現代の暮らしに必要な電力もDIYを取り入れて一部自給する暮らしを営む豆野さん。
「買うこと」と「食べること」が直線的な関係のみで完結してしまうと、その作り方のプロセスはもちろん、原材料の背景や作る側の思いなどを感じることがどうしても欠けてしまいます。
「作れるものは作ってみる。」をしてみると、そこから見えてくるものがたくさんあり、兼藤さんのお母さん曰く、「何よりその方が楽しい!」とのことです。
「“結果”も大事ですが、そのプロセスを五感で感じたりする“過程”が大切」と兼藤さん。
「商品としての価値からの自由」と人の居場所を考える
手作りの味わいや楽しさを実感すると、専門家が作る世間一般に「良い」とされる商品として完成度の高さの価値の他にも、「作る場所や人が違えばこんなに違う」というそこにしかない良さや個性が輝いて見えてきます。
それは、大人にも子どもにとっても大切なコミュニティーや居場所の問題に置き換えても同じことが言えるのかもしれません。
「手作り」から広がる生き方の多様性や社会のこと、ルールの枠などについて、今後もじっくりと考えてみたいと感じさせてもらえました。
ポップコーンがはぜたから
座談会メンバーの星野さんが作る作物のひとつはポップコーン。
そのポップコーンが「無事にはぜた」ので9月末に予定されている田原市での「第一回 渥美半島花火大会」にポップコーン屋さんとして露天出店を計画中とのことです。
【とうもろこしのポップコーン種について】
「ポップコーン」とは一般的に食べる「スイートコーン」とは全く別の品種。
ポップコーンの原料となるのは「爆裂種」で、爆裂種は一般的なスイートコーンと比較すると固く、乾燥している。「スイートコーン」では一般的にはポップコーンを作る事は出来ない。 加熱すると「爆裂種」は皮が破れ開く。
また星野さんの話では、ポップコーンを栽培する際には、スイートコーンを同時期に植えている場合、交配を防ぐため、植えた畑から300m以上の距離をとって作付けすることが必要とのことです。
鶏を飼ってみる
今回の座談会メンバーと「聞き耳」として会場にお越しいただいた方の中で現在、鶏を飼育している、また養鶏に関わっている人が4人も!
豆野さんは長年自然養鶏として品種混在で楽しみながら飼育、星野さんは現在ひよこも含めると60羽を飼育中。
安藤さんも「どろんこ村」や自身が関わる様々な場所で鶏のお世話を実践中。そして、「聞き耳」で参加してくれた広野さんは田原市街の住宅地で飼育中とのこと。
「鶏を飼ってみたい、という人に先ずは何から取り掛かれば良いでしょうか?」との問いかけに「家族からの理解ですかね。」と広野さん。
トライ&エラーをしながらゲージづくりなどの環境づくりを工夫しながら取り組んでいるそうです。
鶏の餌には、家庭から出る残飯や、地域の農家さんや信頼出来る食の製造業者さんからもらう、出汁がらや、おから、うどん、屑米、糠などで賄っています。
星野さんの養鶏にかかる餌代は「おから代」として支払う「100円」のみとのこと。
手作りすることで広がる世界
座談会で話された話題は多岐に渡り、ここでは全てをレポートすることは叶いません。見えてきたのは「作ること」ではじめて見えてくる世界があるということ。
プロセスの楽しみや、社会の背景、人の心などを学び、自分で考えて失敗しながら手を動かして体験するよろこび。
作って上手く出来たものは、自ずと人にお裾分けしたい気持ちになり、それを社会に表現したくなります。
そんな過程を通じて、「自分とは?」「社会とは?」を考えるきっかけとなることが「作ること」の醍醐味のひとつ。
大豆を育てる・お茶の木を植える・梅の木を植える・燻製・和菓子を手作り・豆腐づくりなど、チャレンジしてみたいことがたくさんあります。
皆さんと実践と知恵と学びを楽しく共有する「野市」と、そこで開催する「農学カフェ」を今後もお楽しみに!
唐津からの手紙
前回に続き、今回も唐津在住の土人形作家、田中 泉さんから手紙とイラストでの「農学カフェレポート」が届きました。
「縄文漬けとは?!」参加者の中の1人がこの手紙を読み、「ぜひやってみます!」と言ってくれました。
◾️「野市」がはじまります。
毎月第4土曜日 19時〜21時
場所/ みんなの産直マルシェYotteco
詳細はまた後日にご案内致します。
text/Myoujou Library
photo/Koshi Asano
2024/8/30